米国オートデスクは、米国ビジネス誌「Fast Company」が発表した「世界で最も革新的な企業 2026」の建築分野で、 2 年連続で選出された。ノートルダム大聖堂やフランク・ロイド・ライト設計の「落水荘(Fallingwater)」といった世界的に重要な文化遺産の保護・修復に貢献している点が注目され、同社が推進する「目的あるイノベーション」を象徴する取り組みが評価された格好だ。
歴史的建造物は気候変動や老朽化、自然災害などにより、かつてないほどのリスクに直面している。求められるのは従来の修復手法にとどまらないアプローチであり、精緻なデータ管理とデジタル技術の活用を組み合わせることで、より高度でサステナブルな保存が可能になりつつある。
日本法人の中西智行代表取締役社長は2年連続の選出について「テクノロジーが未来を創るだけでなく、歴史や記憶、そして地域社会の価値を守る力を持つことを示している。日本においても文化遺産の保全は重要なテーマであり、デジタル技術の活用による新たな可能性が広がっている。これからも次世代へ受け継ぐべき価値を守る “目的あるイノベーション” を推進していく」と語る。

2019 年に発生したノートルダム大聖堂の火災では大聖堂の詳細な 3D BIM モデルを作成し提供した。このモデルは風や光のシミュレーションや施工計画の高度化、チーム間の連携強化に貢献し、250 社以上の延べ2,000 人を超える専門家が同一データを基に作業できる環境が実現した。大聖堂は火災からわずか 5 年で再開され、伝統技術とデジタル技術の融合による新たな修復モデルを示した。

ユネスコ世界遺産の落水荘ではリアリティキャプチャと Scan-to-BIM 技術を活用したデジタル記録を実施した。ドローンやレーザースキャンにより数百万点のデータを取得し、建物と周辺環境の高精度なデジタルツインを構築し、構造分析や修復計画の高度化に加え、長期保存に向けた基盤を整備した。
テクノロジーの進化によって歴史的建造物はこれまでにない精度で記録・可視化されるとともに、関係者間のより高度で円滑な連携が可能になっている。BIM やリアリティキャプチャ、クラウドベースのコラボレーションといった技術は、現代の保存活動における基盤となりつつあり、従来の「事後対応型」から「データに基づく予防型」へと保存の考え方が進化し、歴史的建造物の長期的かつ持続可能な維持管理が実現されつつある。