連載 発注者CDE最新動向セミナー(中)

国土技術研究センター 早川 潤氏 
データ駆動の意思決定が重要に

 日刊建設通信新聞社のセミナー「発注者CDEの国内外最新動向」では、京都大学成長戦略本部インフラ先端技術コンソーシアムシニアフェローの福地良彦氏、国土技術研究センター技術・調達政策グループ総括の早川潤氏、中日本高速道路技術本部 環境・技術企画部技術企画課専門副主幹(インフラDX担当)の石田篤徳氏が登壇し、発注者CDEのあり方と受注者CDEの方向性を述べた。3氏の講演を連載で紹介する。

 第2回目は「国土交通省直轄土木事業に期待される事業監理CDEとは」をテーマに講演した早川氏にスポットを当てた。

国土技術研究センター 早川潤氏

 受・発注者とも書類作成に時間をとられている。この状況をゲームチェンジすべきだ。SF映画「スター・ウォーズ」ではホログラムで次の戦術を練っている場面があり、シミュレーションゲーム「シムシティ」ではヒートマップで犯罪発生率を見える化し、警察署の配置を判断している。こういう仕事のやり方を私は「SF思考」で常に考えている。

 2020年から2年間着任した関東地方整備局の荒川下流河川事務所長時代にチャレンジした「3D河川管内図」がCDEのナレッジになっている。荒川下流では多くの工事が稼働し、定例会で工事位置図(ポンチ絵)と進捗一覧表が記され、そこには懸案事項などが詳細に記されていた。担当者は2週間ごとにこの書類を作成していた。

 それを取りやめ、GISプラットフォームに情報を集約した基盤が3D河川管内図である。受注者がウェブで工事進捗などを直接入力できるようにし、計画と実測の状況を色分けしてマップを見れば各工事のどの部分で遅れが生じているかが一目でわかるように工夫した。週間工程、現地写真などの細かな情報も紐付け、書類ベースからデジタルマップへの転換を図った。まさにシムシティのような管理を実現した。

 重要なのはデータを作ることではなく、何のデータで意思決定するかだ。意思決定に必要なデータを作成し、そのデータを用いて協議して意思決定を行い、次の行動を起こす「データ駆動の意思決定」が重要である。

 BIM/CIMはもともと3次元モデルに情報を付与するものと定義されたが、ISO19650では「設計・施工・運用プロセスを円滑化するために建設資産のデジタル情報を共有・活用すること」と位置付けられている。国交省では25年3月にBIM/CIMを、建設事業の情報をデジタルデータとして統合管理することと再定義した。BIM/CIMは「情報のモデル化」であり、「3次元化するだけ」という認識は改めてほしい。

 これを前提に国土交通省が検討しているプロジェクトCDEについて紹介する。現在はASPで受・発注者が情報を共有しているが、現場では「データの存在・場所」「データ同士の関係性」「最新の履歴」「経緯・背景・根拠」がわからないため、「検索」「確認」「作成」に余計な時間がかかっている。それらの課題解決がプロジェクトCDEでは期待されている。

 プロジェクトCDEで実現すべきは、電子書類ではなくデジタルデータで整理して保管することだ。それによってデータ駆動の新たな働き方が実現する。事業監理データは3次元モデル、デジタルマップ、懸案タスク、事業費グラフ、ガントチャートなどの表現でダッシュボードに人間が直感的に判断できる情報として可視化され、次の行動のための意思決定を行う。受注者システムや、データ活用アプリケーションともAPI連携される枠組みを想定している。

 書類作成から解放されるためには、例えばLiDARで3次元計測した点群と3次元データを重ね合わせ、その比較をして差分が基準値内であれば問題なしという判断をCDE上で完結できれば、いつ誰が作成し、照査し、確認したかの履歴もきちんと残る。CDEで、近い未来に監督・検査業務のあり方にも変革をもたらすだろう。

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この記事は建設通信新聞からの転載です

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