連載 発注者CDE最新動向セミナー(上)

京都大学 福地良彦氏 
発注者と受注者のCDE連携へ

 日刊建設通信新聞社が東京都内で開いたセミナー「発注者CDEの国内外最新動向」には、国土交通省や民間インフラ事業者に加え、ゼネコン、建設コンサルタントなどのBIM /CIM推進担当など約80人が参加した。国土交通省でプロジェクトCDE(共通データ環境)構築の検討が本格化する中で、京都大学成長戦略本部インフラ先端技術コンソーシアムシニアフェローの福地良彦氏、国土技術研究センター技術・調達政策グループ総括の早川潤氏、中日本高速道路技術本部 環境・技術企画部技術企画課専門副主幹(インフラDX担当)の石田篤徳氏が登壇し、発注者CDEのあり方と受注者CDEの方向性を述べた。3氏の講演のポイントを連載で紹介する。

 第1回目は「CDE最新海外動向:海外視察とAutodesk Universityからの報告/発注者と受注者のCDE連携へ」をテーマに講演した京都大学の福地氏にスポットを当てた。

京都大学 福地良彦氏

 国土交通省では建設プロジェクトごとにASPを使って情報共有しているが、プロジェクト間でASPの情報が連携していないため、全体でデータを把握することは難しい。CDEを活用した場合、データは1つに集約され、関係者がプラットフォーム上で情報をやり取りできるため、プロジェクトの横断的な情報管理も可能だ。

 オートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』はBIM情報マネジメントの国際規格ISO19650に準拠している。CDEの活用ではISOの要件を満たすことで、情報を追跡しやすくなり、分類性や検索性も高まる。何よりも情報は人ではなく、システムが位置付けることが重要だ。

 私はCIMが提示された2013年から国土交通省の海外視察に同行しており、25年度は京都大学の代表シニアフェローとして英国の環境庁や高速鉄道、アイルランドのダブリン空港、ドイツの送電系プロジェクトなどを視察した。BIMの活用状況に加え、CDEの運用状況やデータ作成の責任分界、ファイル編集方法、維持管理データの活用方法などを調査した。

 英国環境庁では、発注者CDEと受注者CDEを、APIを使って接続する試みをしている。発注者のCDEに受注者が参加する枠組みではなく、受注者が日頃使うCDEからAPIを介して発注者側のCDEと情報連携する枠組みを構築している点は日本でも大いに参考になる。

 アイルランドのダブリン空港は空港を運用しながら滑走路の増設や改修、維持管理を重要視している。ACCを設計、施工のマネジメントに活用している代表的な事例の1つ。ただ、ACCですべてをまかなっているわけではなく、工程計画には別のソフトを活用し、センサ情報との連携によってリアルタイムに維持管理も進めている。海外事例の多くはGIS(地理情報システム)を効果的に活用している点も注目できる。

 建設が最盛期の英国高速鉄道「HS2」も、GISを使い、どこで何が起きているかを常に把握している。設計や施工で発注者が指示したものにはアセットIDが付与され、全ての情報がリンクしている点も注目すべきだ。これによって横断的に情報を一括管理できる。全ての部材にアセットIDが付与されているため、コンクリートとかの使用料なども算出可能だ。CDEではダッシュボードが重要な役割になり、これによって使いやすさが大きく違ってくる。

 ドイツの送電網整備プロジェクトではACCとGISを効果的に活用し、電力計の設計資産管理ソフトとも連携している。どの事例もCDEの構築によって設計と施工をつなぎ、サイロ化した工程間の情報連携を強化したいと考えている。課題としては既存システムを軸にしながら段階的に導入しなければいけない点だ。既存を使いながら新しいワークフローを実現していく流れになり、チェンジマネジメントが強く求められる。

 海外ではコンサルタントがACCの管理を取り仕切り、必要な情報かどうかを確認してCDEを構築している。標準化からはみ出した情報をきちんと削除することが求められるだけに、BIMマネージャーの存在がBIMプロジェクトの情報管理を左右するように、CDEではインフォメーションマネージャーの存在がとても重要になる。

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この記事は建設通信新聞からの転載です

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