FUKABORI

川田テクノシステム 
テレビCMに込めた思い

 川田テクノシステム(KTS)が知性派タレントのホラン千秋さんを起用したテレビCMで、AI墨消し処理サービス「アルカナ」編と、移動軌跡の可視化を実現する技術「VSLAM」編の2本を放映した。公共インフラ分野で培ってきた知見をベースに、先端テクノロジーを駆使した技術力によって問題解決に取り組む同社の姿勢を、ホランさんを通して力強く発信した。アルカナとVSLAMの取り組みこそが、同社が歩み始めた成長戦略を如実に物語っている。

 黒いキューブを被って買い物をするホランさんの不思議なシーンから始まるアルカナ編では日常の中に潜むプライバシーの危険をユーモラスに描き、AIを使って個人情報を簡単に墨消しできるアルカナの特徴を印象的に伝えた。CM最後にホランさんが語る「個人情報の問題を、DXでなんとかする」というフレーズが印象的だ。

 アルカナはPDFに含まれる個人情報をAIが自動で検出し、墨消し処理するクラウドサービスだ。建設コンサルタント業務では電子成果品を提出する際、個人情報に該当する部分を墨消し処理した成果も一緒に提出する必要がある。図面に記された個人情報の関連情報も墨消しが求められる。設計担当にとって、手作業で進めていた墨消し作業が自動処理できるアルカナの利用価値は高い。

アルカナはPDFの中にある文字情報自体を取り除く

 自動処理の対象は、氏名、生年月日、住所、電話番号、印影、顔写真、ナンバープレートなど多岐にわたる。PDFを墨消し処理する場合、裏写りの課題があったが、アルカナは個人情報の部分を上塗りするのではなく、PDFの中にある文字情報自体を取り除く。建設コンサルタントを始めとする建設分野だけでなく、医療機関や学校施設など個人情報を扱う機関にも広く売り込みを始めた。

 洞窟探検中に迷子になってしまうホランさんが無事に脱出するストーリー展開のVSLAM編では、GPSが使えない環境下でも移動した軌跡を可視化できるVSLAM技術の強みを、ホランさんのコミカルな動きと爽やかな笑顔で表現した。「公共インフラの問題を、DXでなんとかする」というフレーズに、同社の挑戦する姿勢を託した。

 VSLAMはVisual SLAMの略で、カメラ映像を使ってロボットやドローンが自身の現在位置を推定しながら、同時に周囲の環境地図を作成する技術だ。GPSが使えない屋内やトンネル坑内でも自律飛行や移動を可能にし、低コストで高精度な空間認識が可能になる。この基盤ソリューションがあることで、枝葉のように新たなソリューションを組み合わせていくことができる。同社にとっては将来を見据えて拡張性を意識した新技術でもある。

VSLAM技術のイメージ

 アルカナやVSLAMの開発を担う同社開発本部ソリューション開発部の渡辺省嗣部長は「新規開拓の流れをつかむことが、われわれの役割になる」と語る。アルカナは他分野への展開を視野に入れ、VSLAMは建設分野の課題解決を追求する新サービスとしてインフラ事業者への展開を目指している。「いずれも公共インフラ分野で培ってきた知見がベースにあり、これを先端テクノロジーと組み合わせることで、課題解決のツールとして具体化したものになる」と付け加える。

 特にアルカナは同社にとって「ニーズから商品化に至ったソリューションになり、建設以外の他分野もターゲットに位置付けている点でも初の試みになる」と説明する。同社が提供するASP(情報共有システム)サービス「basepage」の議事録作成機能に登載したOCR(光学的文字認識)技術と、物体検知の画像解析技術を発展させ、商品化を実現した。

渡辺氏

 「実はPDFから個人情報に関係する画像を認識する部分よりも、文字部分を検出する部分に難しさがあった」と、渡辺氏は明かす。OCRとAIを組み合わせ、チャンキングという手法によって、スキャンされたPDF文書の中から個人情報を検出できる精度を確立した。現在はクラウドサービスとして展開しているが、要望があればプライベートクラウドへの提供にも対応していく方針で「建設分野以外の需要を取り込んでいきたい。今後も他分野向けの新サービスを展開していく」と強調する。

 2025年7月には、山野長弘会長が代表を務める形でソリューション開発部の開発部隊となる100%子会社「AQiD」(広島市)を設立し、体制の強化を図った。今年2月には開発中のAI技術をいち早く体験できるサイト「KTS OPEN SERVICE」も立ち上げた。同社が公共インフラ分野で蓄積してきた知見とAI技術を掛け合わせ、新たなソリューションの創出を進める中で、実験中のサービスを実際に使ってもらうことが狙いだ。そこで得た意見を新たな開発に展開していく。

 「社内では新技術開発に向けた意識が高まっている」と渡辺氏は付け加える。25年6月に就任した工藤克士社長自らが旗振り役となり、新たな試みを積極的に展開していく思いが社員ひとり1人に広がっている。「しっかりと仮説を立て、取り組んで自ら判断して、取捨選択するトップの意識が、現在の当社の組織力になっている」。様々な問題を、DX(KTS)が解決する。テレビCMに込めたメッセージは、まさに同社自身の決意の表れに他ならない。

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