豊富な橋梁CIMソリューションを軸に着実な成長を続けるオフィスケイワンの保田敬一社長は「新しいステージに踏み込む」と決意をにじませる。3年後の設立15周年に向けて体制強化も整えた。橋梁CIM普及に向け、同社はどのような道筋を描くか。保田氏の目線を追った。

「ソフトベンダーになりたい」と起業した保田氏は、2014年1月の会社設立から情報サービスとして橋梁メーカーなどから3次元モデリング業務を受託しながら地道に活動してきた。その時に使ってきた独自ツールが自社製品に進化した。鋼橋上部工(鈑桁・箱桁)向け3次元設計ツール『CIM-GIRDER』がリリースされたのは2020年のことだ。「鋼橋向けとして業界でも先陣を切る形となり、反響も大きかった」と振り返る。
外販を前提に企業とシステムを共同開発していく進め方が同社流だ。大林組、IHIインフラシステムを軸に、清水建設、エム・エム ブリッジ、宮地エンジニアリングなどとも連携する形でソリューションを増やしてきた。オーナー企業とは密接に連携しながら機能強化とともに、NETIS(新技術情報提供システム)登録も積極的に進めてきた。現在の登録数は10を超える。

橋梁CIMコレクションが売りの1つ
現在のラインアップは、CIM-GIRDERに加え、PC箱桁橋専用の『CIM-BOX』、プレキャスト桁向け『CIM-COMPO』、下部工付き付帯物向け『CIM-KABUKO』、予備設計向け『CIM-PLAN』など全16製品に達する。これらを鋼橋、PC橋、全橋梁の3つに区分けしたセット提供の橋梁CIMシステムコレクションが売りだ。「製品メニューはそろっている。これからはもっとユーザの声に耳を傾けながら機能強化を推し進めていく。得意分野をとことん突き詰めていくことが当社の強みになることは間違いない」と確信している。
橋梁分野以外では電線共同溝向けCIMシステムにもチャレンジしたものの、思うような結果を得ることはできなかった反省もある。「システムは転用できても、ターゲット分野のことをよく知らないと、中途半端に終わってしまう。いい経験になった」とあくまでも前向きだ。
新設橋梁は以前より少なくなったものの、橋梁の大規模更新やリニューアルの需要が下支えする形で、業績を着実に伸ばし、増収増益を続けている。売り上げの半分を占める更新需要への対応強化に向けて、2月には大林組と共同開発した床版更新向けCIMシステム『Qa-Slab』の販売にも乗り出した。設計諸元をルールとして登録することで割付け案を瞬時に生成し、3Dモデルとして出力できるもので、従来属人的で膨大な工数が必要だった床版取替工事の設計業務を効率化でき、高速道路を始めとする大規模更新工事の生産性向上に貢献する。

橋梁CIMの普及に向け、重点テーマに位置付けるのは「建設コンサルタント分野への強化」だ。国土交通省がBIM/CIMの原則適用に乗り出して3年が経過した。「実は原則化はまだ追い風になっていない。ハードルを低くしたことで、身構えていた建設コンサルタントなどの多くが部分的な3次元活用にとどまってしまたことが要因だが、見方を変えれば、まだ需要の伸びしろがあるということ。BIM/CIMの動きが進展してくれば、いつか、その波が大きくなると考えている」と期待を込める。
建設コンサルタントの中には自らの生産性向上や品質確保の取り組みとして自主的にBIM/CIMに舵を切る動きが広がりつつある。熟練技術者の退職に合わせて技術の伝承に力を注ぐ企業も少なくない。同社の売り上げに占める割合は2割程度だが「ニーズをしっかりキャッチして需要を作り出すためにも、期待に応えられるソフトづくりが問われる」と焦点を絞り込む。

製品群の全ては、建設コンサルタント業務でも大いに活用できるが、中でも概略システム『CIM-PLAN』や架設シミュレーションシステム『Sim-BRANE』は「検証ツールとして使い勝手が良い」と強調する。「実は、建設コンサルタントでは橋梁CIMコレクションの導入事例が多い。セット売りで6割引きになるコストメリットが受け入れられている要因の1つ」と付け加える。
3年後の設立15周年を見据え、新たな経営計画をスタートした。ユーザーとの結びつきをより強固にすることが重点テーマの1つだ。「開発中心の技術力で勝負してきただけに、導入先へのフォーローアップがやや手薄だった」。ユーザーを支援し成功に導く専任担当2人を配置し、今年1月からフォローアップ体制も強化した。ユーザーとの直接対話の中から「新たな開発のヒントをつかむ」機会にも大きな期待を寄せる。橋梁CIMの普及に向け、同社は力強い一歩を踏み出した。
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