「変わる1年になる」。グラフィソフトジャパンが3月6日に東京都内で開いたセミナー「全国ロードショー東京」の冒頭あいさつに立ったトロム・ペーテル社長は、そう思いを込める。建築確認申請のBIM図面審査がスタートする2026年度は、同社が日本でBIMソフト『Archicad』の販売を始めてから30年という節目の年でもある。日本のBIMが新たなステージを迎えようとしている中、同社自身も大きな進化を遂げようとしている。「変わる」に込めた思いとは何か。

足元のBIM需要は着実に広がりを見せている。以前は大手企業が先導してきたBIMの導入だが、近年は中小規模の企業がBIMに取り組む流れが鮮明になりつつある。Archicadはアトリエ設計事務所や地域建設会社の導入割合が高い。トロム氏は「BIM図面審査をきっかけにBIMに興味を持つ流れがさらに強まる」と手応えをつかんでいる。
全国的に広がる需要に的確な対応を図るため、サブスプリクションの契約もスタートした。ユーザーに初期投資を抑えられる道筋を示したことで「気軽に始めたいというニーズを取り込む」道筋も付けた。四半期に2、3回のペースで精力的に開いてきたオンサイトの恒例セミナー「全国ロードショー」のあり方も大きな変化を遂げようとしている。
「ロードショーも目的に合った形に細分化することで、ニーズや需要との接点をもっと増やしていく。これまでは大都市まで足を運べないユーザーも数多くいただけに、参加しやすいようにオンラインを主体にしようと考えているが、より実践的で技術的なセミナーはユーザーとの直接対話が重要であり、テックセミナーとしての切り口も展開していく。これからBIMを学びたいというニーズは建築関連団体とのコラボレーションを通して地域密着でイベントを展開することも重視していく」
組織体制も変わろうとしている。「われわれのゴールはArchicadを売ることでなく、Archicadを使って成果を出してもらうこと」。これまでも購入後のサポートは充実してきたが、ユーザーと向き合うカスタマーサクセスチームは成果出しへの後押しに注力し、セールスチームと密に連携しながら多様化する顧客要求に対応していく。
背景には、4月からスタートする確認申請のBIM図面審査が大きな動きとしてある。3年後の2029年春にはBIMデータ審査も控えており、同社に限らずBIMソフトベンダーではBIM確認申請への対応がユーザー要求として広がっている。使い慣れているソフトをどう効果的に活用すれば、BIM確認申請に対応できるか。ユーザーもまた日本の新たなBIMステージに向き合おうとしている。

同日の全国ロードショー東京も、BIM確認申請をテーマに置いた。BIM図面審査の受け皿となる確認申請CDE(共通データ環境)サービス『ArchSync(アークシンク)』を運用する建築行政情報センター(ICBA)のBIM推進室から荒川暁郎参事が「BIM図面審査の超基本」をテーマに登壇したほか、MITO architecture+designの三戸景氏が「BIM図面審査はArchicadで即対応」をテーマに入出力基準をクリアする最適化したプロジェクトモデルデータの作成方法などを解説した。
トロム氏は「これまでBIMは組織設計事務所やゼネコンが先導してきたように、会社単位の枠組みで浸透してきたが、BIM確認申請の流れによって業界としてどう向き合っていくか、標準化の議論がさらに進展していく。まさに日本のBIMが大きく前に進む時代の始まりである。既にArchicadはBIM確認申請の要件を満たしている。現在はより便利に申請業務を進められるような機能開発を推し進めている」と強調する。

同社が注力するのは、BIMを軸に広がるワークフローの流れだ。ドイツに本社を置く建設・メディア系ソフトウェアカンパニーのNEMETSCHEK(ネメチェク)グループに属する同社では主力のArchicadに加え、BIMモデル自動検図システム『SOLIBRI』の販売を手がける中で、新たなラインアップとして建築図面専用PDF編集ソフト『Bluebeam(ブルービーム)』の提供もスタートした。「この3つのツールでより広範囲なニーズに対応できる。BIMを軸にモデルから出力した図面のチェックに加え、図面のやり取りやマークアップまでつながる一連のソリューションが実現する」と手応えを口にする。
AI機能の拡充にも力を注いでいる。Archicadには2年前から導入を進めており、バージョンアップ史上最も重要な発表となったという最新Archicad29には、生成AI『AI Assistant』が組み込まれ、さらに設備設計系ツール『MEP Designer』も搭載した。
全国ロードショー東京の冒頭あいさつで、トロム氏は「30周年を迎えることができた。ユーザーに支えられ、日本のBIMの中で強い存在になれた。今後も日本のBIMの発展を後押ししていきたい」と感謝と決意を述べた。常に成長を続けるArchicadにとって、2026年度はまさに「進化」の年であり、それを実現するために「変わる」決意の年でもある。
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