いかに生産情報を循環させていくか。次工程を見据えた情報の流れ方が、建設DX推進の最重点テーマになっている。各生産プロセス内の情報循環はもちろん、設計から施工、維持管理に至るまで建設ライフサイクルを通じて情報をつなぐことで、生産効率は一気に増す。そうした縦軸と横軸の循環によって、情報自体の価値は大きく高まり、新たなビジネスの可能性をも引き出す。多様に広がる情報価値創出の流れを意識したデータ活用が重要になっている。
建設分野のデジタルデータ活用を取り巻く環境は、大きく変わろうとしている。土木分野では国土交通省が取り組むBIM/CIM原則適用がまもなく3年になり、NEXCOを始めとした民間インフラ事業者が追随するように、BIM/CIMの適用範囲を広げ始めた。都道府県も同様に運用基準を定めるなど、土木分野におけるデータ活用の流れは転換点を迎えようとしている。
建築分野では確認申請業務へのBIM対応が動き出す。4月のBIM図面審査に続き、29年春からはBIMデータ審査がスタートする。設計から施工に移行する建築許可部分にBIMデータの循環ルートができることに対して、建築設計界からは「BIM普及の追い風になる」との期待が広がる。
土木と建築の両分野に共通するのは、情報を共有、管理、蓄積する共通データ基盤(CDE)を構築する流れが広がっている点だ。国交省は直轄土木の事業管理を効率化するデータ連携基盤としての「プロジェクトCDE」の導入に乗り出した。事業監理に必要なデータや作業手順の定義付けなど、データ連携基盤の共通ルールを整備するとともに、運用体制や人材育成のあり方も合わせて検討する。
BIM/CIMの活用に乗り出すNEXCO各社では、進行中プロジェクト関係者との情報共有基盤としてCDEプラットフォームツールを導入する流れが広がるように、インフラ事業者ではCDE基盤の構築が今後のトレンドになりそうだ。既に欧米ではプロジェクト単位でCDEを構築する動きとなり、空港施設などが建設だけでなく管理運用のプラットフォームとして活用する事例も出ている。
BIM確認申請では、基盤システムとして「確認申請用CDE」が準備を整えている。ビルディングスマートジャパン(bSJ)が開発し、それを建築行政情報センター(ICBA)が借り受ける形で4月のBIM図面審査から運用を始める。BIMソフトから出力した設計図面PDFに加え、中間ファイルのIFCデータも補足情報として提出を求め、本番となる29年春からのBIMデータ審査に備える。
土木、建築の両分野で発注者サイドのCDE構築が進む中で、受注者となる民間企業もCDE構築の流れが広がっている。社を挙げてBIM/CIM導入に踏み切る建設コンサルタントも、BIMを全面導入する設計事務所やゼネコンも、生産情報を次工程の業務につなぐ基盤としてCDEの構築に力をそそごうとしている。先行する企業では単に生産プロセスの情報循環を円滑化する基盤としてでなく、蓄積データを別の業務に利活用する付加価値情報として進化させる基盤として、CDEを位置付けている。
CDEは、まさにDX戦略の基盤であり、企業は蓄積データを様々な業務に展開することで、新たな事業の創出にもつなげようとしている。重要なのは、情報を蓄積するための枠組みの部分ではなく、情報そのものの精度である。つまり、情報自体がアナログでは循環しない。デジタル化した情報として蓄積していくことが、CDE構築の絶対条件になる。
日々進化する生成AIは、建設業界でも仕事のあり方を大きく変えるキーテクノロジーとして注目されているが、AIによって業務の自動化や省力化を実現するためには、機械が理解できるような標準形式で整理された「構造化データ」を蓄積していかなければいけない。BIMやBIM/CIMは、構造化データの基盤ツールになる。それが生産情報から付加価値を生み出す出発点となる。一歩先を見据えた改革が求められる。