顧客やパートナーとの「協創」によって最適解を導くBIMコンサルティングを展開するPLUS.1(東京都千代田区、高木英一CEO)が創立1周年を記念してディスカッションイベント「BIM-PLUS.1ラウンドテーブル」を開いた。参加したのは各分野でBIMを先導する梓設計、久米設計、安藤ハザマ、戸田建設、西松建設、三井住友建設、船場、杉孝(SUGIKO)、文化シヤッターのBIM推進担当21人。冒頭、高木CEOは「BIMデータが各業界を越えてつながり、様々な課題を解決する。各分野の専門家が課題解決に向けて連携する協創の流れを大きなムーブメントにしていきたい」と力強く語った。議論のテーマは「BIM推進」「標準化」「協創」の3つ。ラウンドテーブルを通して日本のBIMの進むべき方向性を探る。

【BIM推進】本質的な活用の意識改革を促す
設計事務所やゼネコンでは社を挙げてBIM導入に踏み切る動きが鮮明になっている。多くの企業がBIMの推進部署を置き、そこを軸に社内普及を図っている。ラウンドテーブルには9社から推進役の21人が参加した。PLUS・1の高木氏は「BIM普及に向けて取り組んでいる業務上の課題を共有することで、普及に向けて進むべき方向性を導きたい」と呼び掛ける。
設計事務所は意匠設計、構造設計、設備設計の統合モデル化によって各部門が同時並行で検討を進めることで、業務効率と品質向上を突き詰めようとしている。久米設計の古川智之設計推進本部DX室長が「設計者自らBIMを扱う事を意識し、構築したBIMのワークフローに合わせた流れに移行しようとしている」と説明するように、各社ではBIMを軸とした業務フロー改革が動き出している。梓設計の松澤亮BIM戦略副室長も「BIMの属性情報を利活用するワークフローの確立を推し進めている」と続ける。

ゼネコンも同様だ。設計から生産設計、施工へとBIMデータをつなぐ流れの構築に力を注いでいる。西松建設の濱岡正行デジタルコンストラクションセンター長は「一気通貫でBIMモデルを活用していくための課題整理を進めている」と語り、戸田建設の北川剛司BIM推進室長も「実施設計段階から生産設計部門と協業していく部分に力を注いでいる」と説明する。
ゼネコン各社で全現場にBIMモデルを提供する流れが広がっている中で、安藤ハザマの櫛引誠司BIM推進部施工BIMグループ施工図チームリーダーは「現場に提供したモデルを図面化する部分を重要視している」と強調する。設計部門の視点からは三井住友建設の原田佳幸建築本部設計企画部BIM企画グループ長が「設計者目線でBIMを使うメリットを考え、テンプレートやファミリ、教育マニュアルなどの基盤を整備している」と語る。
このように設計事務所やゼネコンのBIM導入は着実に進展しているものの、ラウンドテーブルからは“本音”も聞こえてくる。「実は、本質的なBIMの活用に至っていない」。社を挙げてBIM導入に舵を切るが、設計担当の中には率先してBIMに取り組まず、CADオペレーターや外注に任せてしまう傾向も見え隠れしている。「設計のやり方自体を変えていく中で、意識の部分も変えることが何よりも重要だ」との声が挙がる。
BIMワークフローを確立していく中で「設計者が指示出しをする場面が目立ち、以前のようにBIMソフトを使いこすような姿が薄れている」との危惧もある。ゼネコンのBIM推進担当からも設計から生産設計、そして施工にBIMデータを引き継ぐ流れを構築している中で「設計部門の当事者意識がやや薄れている」との指摘もある。
BIM推進部門は、生産プロセス全体を見据え、BIMデータ活用の最適な枠組みを構築しているが、設計者は「次工程にデータを活用するという意識は薄く、クリエイティブな部分や根拠出しにデータを使うことを優先しがち」との見方もあり、部分最適でなく、全体最適の視点から各部門がBIMデータ活用に向き合えるかが問われる状況が浮き彫りになった。そのためにも「社として目指すべきビジョンの設定や共有の方針をきちんと示すことが大切になる」との意見も聞こえる。
BIMデータ活用の視点は、分野によっても異なる。建材や仮設足場などの各種メーカーにとっては自社製品をBIM化し、設計事務所やゼネコンに提供していることから「いかにデータを活用してもらうか」を重要視する一方で、生産効率などの側面からBIM対応を推し進めていきたい目的も持っている。
「BIM対応によって社内の生産性向上につなげる仕組みづくりが最重要課題」と強調する文化シヤッターの石川禎設計施工企画部担当次長は、BIMデータを製造部門につなぐ流れの構築を到達点に位置付けている。ゼネコンの現場に「足場BIM」を提供するSUGIKOの三宅祥子技術営業部デジタルサービス推進課長も「BIMモデルから数量を出し発注システムにも取り込んでもらうことで注文手間をなくす取り組みも推進している」と説明する。
近年、BIM導入が急速に進展している内装ディスプレー分野では、提案段階や設計合意の観点でBIMが有効に機能している。船場の大倉佑介BIM CONNECT本部戦略企画部長が「各種メーカーなど協力パートナーとのBIMデータ連携に向けた協業を積極的に進めている」というように、自社内の部門間連携を推し進めるともに、BIMを軸にした企業間連携の流れも広がり始めている。
【標準化】BIM確認申請が普及の追い風
BIMを軸に業務ワークフローを確立するためには、データ標準化への対応が不可欠だ。PLUS・1の高木氏は「BIMの普及には標準化が欠かせないが、行き過ぎた標準化は規制になり兼ねない」と、標準化の難しさを説明する。BIMデータ活用が拡大するにつれ、企業ではCDE(共通データ環境)を構築する流れが広がっている。外資系プロジェクトを中心に発注者情報要件(EIR)やBIM実行計画(BEP)を求められる動きも増えつつあり、標準化は日本のBIMステージを引き上げる上で乗り越えるべきテーマの一つだ。「国土交通省が26年春から建築確認のBIM図面審査をスタートする動きも見逃せない」と強調する。

BIMの国際規格1SO19650を認証取得した安藤ハザマの米満雄太BIM推進部設計BIMグループチームリーダーが「データ連携のプロセスを見直しており、データベースを活用した業務プロセスの確立を進めていく」と説明するように、設計事務所と同様にゼネコン各社もBIMを軸に業務ワークフローの構築に乗り出す動きが広がろうとしている。
設計部門と施工部門のデータ連携に向けた枠組みづくりを重要視している西松建設ではCDEの構築に向けてISO19650を参考にしたフォルダ構成を整備している。三ケ尻幸生デジタルコンストラクションセンター設計BIM課長は「BIMのキックオフ会議で社内向けのBEPをつくることを重要視しており、これが設計者を始め関係者のBIMデータ活用に向けた意識付けにもなっている」と付け加える。
データ連携プロセスを構築している戸田建設の荒木英次BIM設計部長はフロントローディングの流れを推進することに力を注ぐ中で「未確定情報も含めて部門間の情報共有が非常に大事になることから、外部文書などもデータベースとして格納し、次工程にデータを受け渡していくことも欠かせない」と説明する。外資系や官庁案件を中心にBEPが求められるケースが広がっており、関係者間でBIMデータ活用の方向性を共有する社内ルールづくりも徹底している。
三井住友建設の原田氏は「社内向けBEPの流れを構築しており、設計開始時にBIMの取り組みを設計担当に示してもらっており、それをわれわれBIM企画グループが支援している」と続ける。同社も含めゼネコン各社ではCDEプラットフォームを構築に乗り出し、導入コストや使い勝手などを含め、具体のクラウドプラットフォームサービスを選定する動きにつながっている。
23年からクラウドプラットフォームの導入に踏み切った船場では、業務でワークシェアリングが広がり、現在は受注プロジェクトの6割に達する状況だ。多喜井豊執行役員BIM CONNECT本部長は業務の中枢を担う基幹システムとも連携して「リアルタイムにBIM活用や教育トレーニングの状況を把握できる仕組みも構築している」と説明する。
杉孝もクラウドプラットフォームを導入し、足場BIMモデルの作成を担うベトナムグループ会社とのワークシェアリングとともに、業務進捗管理も進めている。三宅氏は「足場BIMモデルを提供する際も、クラウドを活用したゼネコン側とワークシェアリングを展開している」と付け加える。このように分野を問わずクラウド上でBIMデータをやり取りする流れは着実に広がりを見せている。
「BIM確認申請が標準化の一歩になる」。ラウンドテーブル参加者からはそうした声が上がる。国土交通省は26年春からBIM図面審査、29年春からはBIMデータ審査に取り組む。ゼネコンや設計事務所のBIM推進担当からは「BIM図面審査では面積把握がしやすくなるものの、われわれ申請者としてのメリットは限定的」との声が聞こえるものの、「BIM普及の追い風になる」との期待が相次ぐ。
梓設計はBIM先導プロジェクトを指定し、BIMデータ活用に向けた様々なチャレンジを展開している中で今後、新規で選定する先導案件についてはBIM確認申請に対応する方針をもつ。松澤氏は「確認申請の対応がBIM普及の後押しになれば」と期待を込める。久米設計の古川氏も同調するように「図面審査への準備は進めており心配していない」としており、BIM推進担当の目線は、既に29年春から動き出すBIMデータ審査に向けられている。
【協創】発注者メリット感じてもらうために
「どうすればBIMで建設業を良くすることができるか」。PLUS・1の高木氏はラウンドテーブル参加者に向けて、そう呼び掛けた。同社が展開する「協創」によるBIMコンサルティングは、要求が多様化する中で、高度な専門性をもつ者同士の連携によって課題解決をしていく考え方だ。協創相手は同業のBIMコンサル会社だけでなく、設計事務所やゼネコンなどの依頼主側も含めており、「お互いの知見を合わせることでより高度な課題解決策を導き出す」と思いを込める。

「BIMデータが最終的に誰のものなのかを突き詰めると、発注者も含めて考えるべき」と三井住友建設の原田氏は焦点を絞り込む。梓設計の松澤氏も「最終的に発注者がBIMのメリットを感じてもらうことに行き着く」とし、設計段階から施工段階を経て、完成後の維持管理まで「BIMモデルがつながる流れを確立する」重要性を説く。
その前提になるのは、生産プロセスを通じてデータを循環させる共通のルール化だ。西松建設の濱岡氏はプロジェクト関係者それぞれが業務をより効率化する手段として、BIMを活用する上で「様々なテンプレートやルールで作られたBIMの属性情報をデータとして後工程にスムーズに引き継いでいくことが重要になるだろう」と考えている。戸田建設の荒木氏もデータをつなぐ視点から「コード連携の必要性」を強調する。
データ流通の統一化は他の分野からも賛同の声があがる。文化シヤッターの三森氏は「図面を書かなくてもBIMから製品の製造工程にデータを引き継ぐ流れが実現する」とし、SUGIKOの高橋理恵子技術営業部技術営業部次長は「BIMを活用するメリットがいかに見いだせるか、それをゼネコンと共通認識としてもつことができるかが重要」と説明する。
船場の大倉氏もデータ連携については「建材メーカーなどと最重要テーマに位置付け、日々議論をしている」と語る。データ連携を突き詰める上で、BIMの過剰な属性情報をそぎ落とす「断捨離」の試みを呼び掛ける久米設計の古川氏は「建設業界の各分野が最低限必要な情報は何かを一度立ち止まって考えてみることが、データ連携の近道になるかもしれない」と付け加える。
ラウンドテーブル参加者の多くは、企業内や企業間、さらには各分野をつなぐPLUS・1のような「架け橋」的な存在の必要性を強く訴える。個別企業では同業他社はもちろん他分野の企業ともBIM推進に向けた悩みを共有し、課題解決に向けた取り組みとして推進することができない。PULS・1の高木氏は「皆が同じような悩みを抱えている。そうした共通課題を個別に解決するのでなく、プラットフォームサービスとして示すことができれば、日本の建設業界としてBIMステージを引き上げていくことができるはずだ。そうした具体の取り組みを来春にも提示したい」と明かす。各分野のBIM推進担当が一堂に会し、共通課題について意見交換したラウンドテーブルは、まさに「協創」の場となった。
この記事は建設通信新聞からの転載です