発電プラントの配管支持装置や操作架台の設計・製作を担う山下製作所(大阪市)が、トリンブル・ソリューションズの構造BIMソフト『Tekla Structures』(Tekla)を軸に生産効率化を推し進めている。山下敬介社長は「既に設計から製作まで一貫してTeklaデータを活用する流れを整えたが、まだ理想の状態には至っていない。自動化に向けて追求の手を緩めず進んでいく」と強調する。

日本国内でも先陣を切るように、1999年にTeklaのライセンス契約を結んだ同社は、2次元CADと比較検証しながら、Teklaの導入範囲を拡大してきた。当初は操作架台の設計に限定していたが、2015年頃から配管支持装置にも拡大し、全面導入に踏み切った。土田圭二執行役員設計部長は「それを境にライセンス数も一気に増やした」と振り返る。現在は38ライセンスを確保し、「Teklaデータを設計から製作まで一貫して活用する流れを確立している」と付け加える。
発電プラントの配管支持装置は、単に配管の重量を支えるだけでなく、熱膨張による配管の変化や、地震時などの揺れ対策も求められる。Teklaにはユーザーが独自に補助ツールなどを開発できるカスタマイズ機能があり、同社は配管支持装置設置や鋼材入力などの作業をより効率的に進めるための補助ツールを整えてきた。これまでに開発したシステム数は50を超える。例えばTeklaモデルから配管径や梁までの距離を自動把握し適切な配管サドルを抽出するほか、Teklaモデル上で配管支持位置の指定によって必要なオプションの選択ができるようにするなど、補助ツールが設計の品質確保に貢献し、作業の円滑化についても下支えしている。

一連のシステム開発を担う鈴木翔也開発部テクニカルマネージャーは「顧客や配置条件によって設計の要素が変わる。当社の製品ライブラリデータと連動したシステムを形づくることで、配置作業をより効率化することに力を注いでいる。設計部からの相談を受けて一つひとつ開発を進めている」と説明する。設計部は30人体制となるが、まだ経験の浅い設計担当もいる。土田氏は「補助ツールによって設計ミスは減り、誰が取り組んでも一定の品質を確保できている」と強調する。
同社は、設計のTelkaデータを製作の加工機にも連携する一貫システムを構築している。「Teklaデータを読み込めることを条件に加工機の入れ替えを進めてきた」と山下社長が説明するように、滋賀工場の一次加工ではTekla対応の形鋼全自動加工システム、パイプコースター、鋼板加工複合機を順次導入し、23年11月からはヤマザキマザック社製の長尺パイプ・形鋼専用3次元ファイバーレーザー加工機も稼働させた。「一次加工の生産性は大幅に高まり、加工ミスもほぼなくなった」と手応えを口にする。
Teklaによる一貫設計・製作システムについて、畠山武司執行役員開発部長は「3次元モデルと図面の整合性を担保したデータを製作側に展開できている点が最大の効果であるが、人材教育の側面でも基盤ツールをTelkaに一本化したことで、より効率的に社内教育を進められる利点も生まれている」と説明する。村上拓宏取締役副社長経営企画室長は「間違いなくTeklaが他社との差別化ツールにもなっている。設計から製作への円滑なデータ連携環境をしっかりと構築していくことが当社の競争力になる」と強調する。

同社は大手プラントメーカーからの設計・製作依頼が全体の8割を占める。近年は新規顧客の開拓にも力を注いでおり、着実に成果も現れ始めているが、中には設計図面を渡され、制作のみを受託するケースもあり、図面情報をTeklaデータに変換するシステム開発にも力を注ぐ。
山下社長は「質の高い設計データを効率良く製作につなげることが会社の利益に直結するだけに、Teklaデータを基盤にした自動化の流れをこれからも追求する」と力を込める。今後は溶接作業となる二次加工への展開だが、ロボット溶接についても情報収集を進めている。「近い将来に備えてTeklaデータを最大限に生かすための準備をしていきたい」と先を見据えている。同社はTeklaを軸にした成長戦略を描いている。
この記事は建設通信新聞からの転載です