応用技術が仮設足場レンタル会社の杉孝(SUGIKO)と共同開発し、Revitアドインツール「BooT.one」の内部足場機能を2026年3月にリリースする。建物内の仕上げ工事などで使用する「内部足場」の計画や検討は複雑であり、非常に手間がかかる。その特性をいかにシステム化するか。BooT.one内部足場機能の開発に向けた両社の狙いを追った。

開発のきっかけになったのは、ゼネコンからSUGIKOに対する要求の変化だった。天井仕上げ作業用などの「内部足場」は、主にゼネコンの現場担当者などが計画を立て足場部材を発注する流れになる。内部足場は階段など設置場所が複雑なケースもあり、細かな部材を組み合わせる詳細な計画が求められる。ゼネコン職員にとってはこれらの計画や発注作業に多くの時間をとられている状況がある。

SUGIKOは課題解決に向け、ここにフォーカスすれば現場の生産性向上に貢献できると考えた。2019年からゼネコンの現場に足場計画モデルを提供する「足場施工BIM支援サービス」に取り組む同社では、年間約100件の現場に足場BIMを提供する中で、内部足場を含めた計画依頼が少しずつ増えていた。三宅祥子デジタルサービス推進課課長は「複雑で難易度の高い内部足場のモデリングにより早く取り組みたいと考え、応用技術に相談する中でBooT・one機能として共同開発する流れが具体化した」と明かす。
両社が開発に乗り出したのは、24年1月からだ。応用技術の木村征爾営業部セールスマネージャーは「SUGIKOの単独システムとして開発する選択肢もあったが、業界の役に立ちたいという思いから、BooT・oneの機能開発として貴重なノウハウを提供する決断をしてくれた」と強調する。BooT・oneはBIMソフトのRevitを円滑に使うためのアドインツールとして19年7月から提供を開始し、ユーザーからの要望を受けて仮設関連の機能として内部足場にも対応しているが、部材が細かく、配置が複雑である内部足場の要求を全て満足できている状況ではなかった。
BooT・one仮設の担当エンジニアである応用技術DX事業統括ソリューション第一本部開発二部の村田翼氏は「内部足場の組み方や配置の仕方など現場目線の細かな部分までSUGIKOのノウハウをシステムに落とし込むことができた」と説明する。両社は24年1月から設計仕様の要件定義に着手し、同年9月からシステム開発を本格化してきた。年内にも開発を完了する見通しで、26年1月からSUGIKOが試験運用を進めながら、同年3月にリリースする計画だ。

現在の足場は、従来の枠組みタイプとは異なるくさびタイプの次世代足場が主流になっている。既にBooT・one仮設の機能に組み込まれている外部足場では、SUGIKOの次世代足場「アルバトロス」を始め5製品に対応しているが、内部足場については従来の枠組みタイプにとどまるだけに「アルバトロスを題材に内部足場をシステム化できる意義は大きい」と木村氏は考えている。
SUGIKOの高橋理恵子現場仮設支援課課長は「現場で設置する足場計画は一つとして同じものはない。特に内部足場は複雑な計画になる。安全な組み方を体系的に提示できる観点からも、BooT・oneの内部足場機能としてアルバトロスが組み込まれる効果は大きい」と強調する。三宅氏も年間100件もの現場に足場BIMを提供する中で「増えつつある内部足場への要求に迅速な対応が図れることは、生産効率を向上できるツールとしても有効」と付け加える。
開発の最終段階に入ったBooT・one内部足場であるが、当初は苦労の連続だった。村田氏は「支柱自動配置機能の確立がもっとも大変だった」と振り返る。内部足場は階段やエスカレーターなど設置面がフラットでないケースが多い。足元や上部の作業床が段差となっている部分などにも対応できるようにシステムを整えてきた。「想定していたより3倍もの修正時間がかかったが、SUGIKOに機能の一つひとつを細かく確認してもらえたことで、満足のいく機能に仕上がった」と手応えを口にする。
内部足場機能の確立は、両社にとって別の側面でも効果をもたらそうとしている。共同開発を通してSUGIKOからアルバトロス配置方法などの詳しく説明を受けてきた応用技術では、既に機能提供しているBooT・one仮設に組み込んでいる外部足場機能をさらにブラッシュアップする機会にもなった。村田氏は「アルバトロス組み立ての細かなルールや数量把握のポイントなどを知ることができ、外部足場機能の部分も現場目線のシステムとして改善することができた」と実感している。

BooT・oneは、誰もがBIMにつながる世界を目指す「to BIM」サービスを展開する応用技術にとっての主力ツールだ。木村氏は「ゼネコンから仮設メーカーへの要望が高まっている内部足場機能を追加することは、BooT・oneの進化をさらに加速させる取り組みになる」と強調する。
SUGIKOにとっても共同開発の意義は大きい。経営理念に掲げる『上質即利』は、しっかりとした品質を提供し続けることがお客様の利になり、最終的に同社の利益として戻ってくるという考え方だ。三宅氏は「まさに足場BIMは『上質即利』に通じる試みになる。成熟しているBooT・oneの新たな機能として当社のノウハウを提供できることは、最終的に推進している足場BIMの普及にもつながる」と考えている。高橋氏も「BooT・one機能として広く使ってもらえることで、当社が足場BIMの提供を通して現場に安全・安心を提供している思いを伝えるきっかけにもなる」と付け加える。
BooT・one内部足場は「支柱自動配置」「支柱手動調整」「部材配置」「単管配置」「壁つなぎ配置」「ステージ自動配置」「ステージ手動調整」「足場自動配置」の8機能で構成する。あえて機能を細かく設定したのは「Revit操作に慣れていない人でも部分的に使えるようにしていることが狙い」と、4人は口を揃える。大手クラスを中心にゼネコン各社では工事着手前にBIMモデルを現場に提供する流れが浸透している。これまで外部足場への対応が主軸だったBooT・one仮設では、内部足場機能が加わり、より現場は仮設計画にBIMモデルを利活用する基盤が整う。
BooT・one内部足場機能のリリースは26年3月だが、両社はその先もしっかりと見据えている。応用技術の木村氏と村田氏は既存の外部足場機能の改良に加え、新たに支保工の部分も今後対応できれば」と決意をにじませる。SUGIKOの三宅氏と高橋氏も「現場ニーズが年々多様化している中で、今後も応用技術と連携して足場BIMの活用に力を注ぎたい」と考えている。共同開発をきっかけに、両社は現場の課題解決に向けた新たな二人三脚の歩を進めようとしている。
この記事は建設通信新聞からの転載です