「使い勝手を重視した最適なモデルを社内に提供している」と話すのは、高松建設のBIM設計室を統括する松崎幹生大阪本店設計部第七本部長だ。受注の9割を超える設計・施工案件の全てにグラフィソフトのBIMソフト『Archicad』を活用する同社では、BIM設計室が企画から概算、設計、積算、施工までに至る各部門にArchicadモデルの共有を担っている。既に概算見積もりでは案件の9割近く、総合仮設計画については全現場がArchicadモデルを活用した業務効率化に取り組む。

同社が1999年から使い始めたArchicadの本格導入に踏み切ったのは2019年からだ。当初は企画段階のプレゼンテーションツールなどに使いながら、徐々に設計や施工段階にも活用の幅を広げてきた。
20年からは大阪本店が受注した設計・施工の全案件にArchicadモデルを提供する体制を整え、企画から概算、設計、積算、施工までの各部門が率先してモデルを活用できる流れを確立してきた。松崎氏は「ArchicadによるBIMワンモデル運用を目指す」と力を込める。

その下支え役となるBIM設計室は、大阪本店の設計部門と生産技術部門の担当者で構成する。今年4月に3人を増員し、現在は17人体制に拡充した。仮設検討、躯体図、生産支援、連携、開発の5グループが、企画から設計、施工までの各段階に最適なモデルを提供している。
BIM設計室の主要メンバーとして活動する大阪本店設計本部の徐霖課長代理は「BIM活用率が高まるにつれ、われわれ自身も社内の高度な要求に対応できるようにスキルアップしてきた」と強調する。24年度は基本設計から積算段階への支援と施工段階の現場支援が、ともに大阪本店が手がけるプロジェクトの約3分の2を占めまでに拡大した。
企画段階のプラン検討では、設計本部の下倉聡史課長がArchicadの独自プログラムとして開発した『TKMPLNsys(高松建設プランニングシステム)』の活用が全体の86%にも達している。下倉氏は「2次元ベースのプラン検討では設計へのデータ活用がしにくい。2年かけてオブジェクトベースでプランを提示できるシステムを作り上げた」と振り返る。今年からはTKMPLNsysと概算見積もりシステムの連携関係を整え、本格的な運用を始めた。
同社はBIM設計室がArchicadモデルを社内に提供する体制を確立してきた。当初はモデル活用を敬遠する現場の意識も見られたが、誰もが手軽に活用できることを心がけながら、各部門へのモデル提供を進めてきた。社内の活用機運が一気に高まりを見せ始めたのは3年ほど前からだ。徐氏は「業務フローの中にモデル活用の流れを位置付けたことで意識が変わり始めた。細かな部分までこだわってモデル化するのではなく、現場の使いやすさを重視したモデルづくりを徹底していることが後押しになっているのはないか」と考えている。

全現場にArchicadモデルを提供している同社では、総合仮設計画段階のモデル活用率が100%に達している。このうちの3分の2の現場所長からは、生産性向上や品質確保にもArchicadモデルを活用したいと、BIM設計室に支援や相談を求める動きが広がっている。松崎氏は「当初は1割程度だったが、一度使った所長が次の現場でも使いたいという流れになり、徐々に割合を増やしてきた。いまはBIM設計室でこなしきれないほどの支援や相談が増えている」と明かす。
Archicadモデルの活用が広がりを見せる同社では、下倉氏が「TKMPLNsysにAI機能を付加させたい」と強調するように、新たなシステム開発に力を注ぎながら、モデル活用の領域をさらに拡大しようとしている。松崎氏は「維持管理まで見据えた一貫の流れを作っていきたい。Archicadモデルをさらに利活用するためにも、BIMの流れを軸にした統合DX(デジタルトランスフォーメーション)を構築したい」と、しっかりと先を見据えている。
この記事は建設通信新聞からの転載です